駒の利きはどう「見える」の?
大駒の利きをうっかりして悪手を指した経験は誰でもあると思う。「駒の利きを見落とした」とか「利きが見えにくい」という言葉もよく使う。
では、「利きが見える」というのはどのような状態なのだろうか? 高段者やプロ棋士には利きはどう見えているのだろうか? 色がついているの? 浮き上がるの? 光る?
利きが見えると強くなる
人類を何百万人と倒したハム将棋には「ガイド」モードが存在する。ここにチェックを入れることで双方の駒の利きを表示できる。
(この機能は意外に知られていなくて勿体無いと思う)
利きが見えるとどれぐらい強くなるかを調査した論文がある。それによると、駒の利きを表示することにより、互角の相手に9割以上勝てたということだ。
対局の勝率は、各棋力とも、圧倒的に本システム使用者の方が高くなった。勝率は9割以上であった。対局数は少ないとは言え、この勝率は、同レベルの対局者ではかなり起こりにくい有意な差であると考えられる、
将棋上達のためには、利きが見えるようになることが重要であると考えられる。
プロ棋士の見え方
女流棋士の渡辺
(将棋盤の5五に角がある場合) 男性棋士には角の利きが1一〜9九へ、そして1九〜9一へと見えているんだと思う。少なくとも、私には駒の利きが見えません。1手1手、駒の動きを読んでいくことはできます。
でも、その場面場面で駒の利きを感覚ではつかんでいない。男性棋士は駒の配置ではなく、感覚で駒の利きをつかんでいるような気がする。将棋世界2015年2月号 P.122 「私はこうして強くなった」
渡辺さんは「男性棋士」と書いているが、これが本当に性差に基づくものなのか単なる個人差なのかは不明。私は個人差の方が大きいと思う。
別のコラムにも同じようなことが書かれている。
そう、私の脳内将棋盤だ。薄暗く、升目の大きさはバラバラで、おまけに線が消えかかっているので、角の利きなどはひとつひとつ数えないとわからない。
残念ながら他の棋士に関しては記事を探すことができなかった。脳内盤については2012年のAERAに掲載されているが、利きについては特に書かれていない (天才棋士「驚異の脳内パネル」 AERA 9/17号)。
共感覚?
共感覚を持つ人は文字や音に色が付いて見えたりするという。将棋の場合も、共感覚により利きが見えるという方がいらした※1。mixiでも「金銀の利きや飛角の利き、陣形など、 見た瞬間にフルカラーで認識できます」という方がおられた※2。共感覚を持つ人は「最新の調査では23人に1人というものもある」らしく※3、利きが色分けされて見える人は意外に多いのかもしれない。
利きに色がついて見えると勝率も上がるらしいから、もしかしたら将棋の強い人の中には共感覚者も多いのかな? チェスはどうなのだろう?※4
- ※1 将棋についての共感覚 岩崎純一
- ※2 [mixi] 【将棋の部屋】 コメント[7]
- ※3 CiNii 論文 – 音を聴くと色が見える : 共感覚のクロスモダリティ
- ※4 “synaesthes chess”などで検索したが、海外の事例を見つけることはできなかった。どの単語で検索すれば良いのだろう?
利きの見え方を強化するアプリ
私が探した範囲ではアナグマンの駒の動き方特訓しかありませんでした。iPhone用。
2つの駒の両方が利いている場所を当てます。駒を透した利きも有効なので結構難しい。というか、私は「おに」レベルがクリアできません……
- アナグマンの駒の動き方特訓 (iPhone)
私の見え方
私も利きは見えないですね。例えば、角に意識を向けるとその瞬間だけ斜め方向に何かがあると思えるぐらい。もちろん色も見えない。浮駒や利き数の計算をするときは、高速に盤面をスキャンして利きをバッファに貯めておくような感じです。これ、アプリで鍛えたら強化できるのかな?
ネット将棋の盤面だとスキャンがうまくいかないのか見落としが多いので、現物の将棋盤駒に結びついている感覚のように思います。どこで身についたのだろう?
これを読んでいる皆さんには利き筋はどう見えているのでしょうか? コメント欄などで教えていただけるとありがたいです。
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