1手詰めを勉強する理由
棋力向上の最初の一歩は1手詰めだ。しかしながら、まったくの初心者を脱してそれなりに対局できるレベルになると、1手詰めは簡単すぎるように感じられて結局手を出さない人も多いように思う。
私も最初のころは手数の長い詰将棋を解く方が良いのだと思っていた。しかしそれは誤りだった。今では1手詰めは確実にマスターした方が良いと思っているし、初級者にも勧めている。
1手詰めの効果
1手詰めが見ただけで解けるようになると、簡単な詰めろをかけられるようになる。
これは私の実戦からの部分図。私が▲5四桂と打った局面。
相手の方がこれを軽視して別の手を指したところで▲6一龍。△同玉と取ると△6二金打で詰むので取れない。逃げてもダメなのでここで後手投了。
冷静にみれば簡単な手なのですが、実戦ではついつい見落としたりしますし、このような手が指せるようになると勝率が向上します。
(訂正:指し手が一部間違っていました。指摘いただきありがとうございます)
コンピュータ将棋で試してみる(勝率)
1手詰め学習前の人間と習得後の人間を比較することは難しいが、コンピュータ将棋なら簡単だ。
わかりやすいソースコードが公開されている 「やねうら王」※1を1手詰め有り・無しの2通りでコンパイルし、2000回対局させてみた。
(対局条件は1手1秒、1スレッド、先読み無し、NarrowBook。対局にはShogiGUI※2を利用)
一手詰め有りから見て 1170勝791敗39引分。勝率59.7%、レーティング差は68.0。 一手詰めをマスターするだけで互角(5:5)の力の相手に3勝2敗の割合で勝てることになる。
(99%信頼区間は 勝率56.8-62.4%)※3
- ※1 YaneuraOu classic-tce KPP 2.78 64 AVX2 (やねうら王classic-tce版、正式公開しました | やねうら王 公式サイト)
- ※2 ShogiGUI – コンピュータ将棋
- ※3 Confidence interval calculator (2016-04-28, LFICS)にて計算
コンピュータ将棋で試してみる(終盤問題)
同様に1手詰め有り・無しで終盤問題が解きやすくなる例を見てみよう。
龍が当たりになっていて、逃げる手から考えたくなる局面。
これを1手詰めなしで検討すると、勝ちまで読まないと▲2四桂に気がつかない。2万ノード以上読まないといけない。
龍の評価値が高いので、龍を取られない手が優先されてしまっている。
1手詰めありだと▲2四桂△2三金▲3二金が詰みであることにすぐ気がつき、▲2四桂が選択されている。勝ちがわかるまでに読む局面数も少ない。
初級者の方はまず1手詰め
ここまで述べたように1手詰めの効果は大きい。初級者のうちは終盤の一手ばったりも多く、うまい詰めろをかけると勝率はかなり向上すると思う。
パターンを完全に覚えてしまうまで何度も繰り返し解くことをお勧めする。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません