大人向けの良書:はじめてでもたのしめる かんたんマスター将棋

2017/01/02書籍

大人向けの将棋入門の良書「はじめてでもたのしめるかんたんマスター将棋」を発見しましたので、ご紹介します。入門書をまず1冊買って読みたい方にお勧めです。

以下、なぜこの本がお勧めなのかを、いままでのよくある入門書と比較して説明します。

良い入門書が探せない

「将棋 入門書」で検索すると 色々な本が紹介されていますが、そのほとんどは初心者向きではない本や初心者にはわかりにくい本だったりします。なぜでしょう?

ほとんどの入門者は、将棋を始める際に近場にある適当な入門書を1冊だけ読みます。読んだあとは親や友人や将棋教室などで対局し、対局を重ねることで徐々に上達していきます。昭和のころは将棋を指せる人が多かったので、入門書を読まずに親戚や友人から習った人も多いでしょう。そしてある程度上達してしまえば、入門書は不要になります。入門書を何冊も読んで比較検討する人はほとんど居ません。ですから将棋の強い人から入門書を紹介されても、それが良い本である確率はかなり低いのです。

そして、ひと握りのロングセラーを除けば書籍は再版されないことが普通ですので、仮にその1冊が良書でも入手できないことも多いのです。

誰に聞いても「書店に行って適当な本を買え」以上のアドバイスは得られなかったのです。

(Webの情報があまりにも参考にならないので、私が入門書を比較検討して書いたのが「初心者のための将棋入門書」です。こちらもご一読ください)

入門書の出来もひどかった

昭和の頃の入門書は「周りに将棋をさせる人が大勢いる」ことに甘えていて、駒の動かし方・並べ方など最低限の知識を教えたら「あとは友人と実戦しましょう」と読者を放り出していました。当時の本を読むと、その不親切さと難解さにはびっくりさせられます。

男性のほとんどが将棋を指せた時代ならともかく、将棋人口530万人(レジャー白書2015)の時代には旧態依然の参考書では将棋は習得できません。

流れが変わったのは羽生善治のみるみる強くなる将棋入門(全7巻) からでしょうか。この本は画期的でした。とにかく細かく・丁寧に解説してあって初心者を途中で放り出す事がありません。今でもこれに勝る本はないと思います。さすが羽生さんです。ただし解説が詳しいだけあって巻数が多いのが痛し痒し。

木村八段の「はじめてでもたのしめる かんたんマスター将棋」

そうは言っても世の中進歩するもので、はじめてでもたのしめるかんたんマスター将棋という良書が出ていました。
よくある将棋入門書と異なり、教えるべきことをきちんと解説した後に、例題、練習問題と進みます。これ学問の習得の王道ですよね。練習(復習)することで脳にきちんと定着させるのは理にかなっています。

さらに素晴らしいことに、この本では「駒得と駒損」「強い手」についても説明が書かれています。駒を取られそうでも逃げずに さらに強い手で返すのは、上級者ならよくあることなのですが、それを詳しく説明している本は見た事がありません。この説明部分だけでも、この本には価値があると思います。さすがは千駄ヶ谷の受け師の木村八段です。

なお表紙にはCGキャラクタが書かれていて子供向けに見えますが、本文はふりがなも振られておらず、どちらかといえば大人向けの本だと思います。中学生以上なら読めるかな?
(内容が良いだけに表紙と書名で損をしている本だと思う)
2010年発行の本ですので、書店では売り切れているかもしれません。電子書籍版もあります。

羽生さんのみるみる三部作が1冊にまとまったような本ですし、練習問題が多く載っていますので、解説されている内容はやや少なめです。本書で物足りない場合は、羽生さんのみるみるの追加購入をお勧めします。

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