将棋入門者が学ぶべきスキル(3)紐をつける

2017/03/18将棋入門

将棋入門者が学ぶべきスキルの3回目の記事です。私が見つけた技術を書いていて、必ずしも簡単な順序にはなっていません。過去記事は下記にあります。

簡単な技術ほど、それを知らない人に会うことが難しい

当たり前の話なのですが、将棋を普通に指している方はある程度の技術は皆さん習得済みなわけです。小学校のときに覚えて特に将棋の本など読まずに友人と指してばかりの方でも、数の攻めや紐つけ、浮き駒の把握や両取りをかけることはほぼ理解しています。その先にある、例えば詰めろ・必至という概念であったり、定跡や玉の囲い方、(特に駒を捨てる)手筋などは、棋書を読んだり・指導者に習わないとなかなか身につきません。そして、このレベルで苦しんでいる人は多いので、これらに関する入門書はそれなりの数が出版されています。

ところが将棋を覚えつつある人や、途中で挫折してしまった人にはなかなか会う機会がありませんし、対局する機会はさらに希少です。ですから、本当の入門者が何を考えていて何を知らないのかは、ごく一部の方しか知らないと思います。そもそも普通の人は他人の知識の多寡には興味を持たないと思います。

紐がわからない

一番小さなサイズのどうぶつしょうぎを卒業したばかりの子と10枚落ちで対局。駒の動かし方も覚えて、大駒を成れるようになった。そのときの私との終盤が下図(抜粋)。
ここでどう指していいかわからなくて困っていたのだけど、何がわからなくて困っているのかをこちらが把握するのに時間がかかった。


使ってる駒の書体がわかりにくくて龍と馬がわからないのかと思い、裏面を見せてもダメ。というか、駒の動きはちゃんと把握できている。
(学校で習っていない漢字だらけなのですが、ちゃんと覚えていました)。

「この王様は詰んでいるから1手で詰ませてみて」と言っても悩んでいる。試しに何か動かして見てと言うと、王手にならない手や7七とを指してくる。7七とだと6六に逃げられると教えても長考。

そのあとも何度かやりとりして、ようやく私にも理解できた。紐の概念がまだわかっていないのだ。7七馬と指した場合、「もし大事な馬を取られたらどうしよう」と考えている。と金は安い駒なので捨ててもいいわけだ。

なるほど。だから7七となのか。

実は紐って難しい?

ここで7七馬と指して詰みになることを理解するには以下のことがわかっていないといけない。

  1. 王手がかかっていること
  2. 9五龍と7七馬の効きにより、玉が逃げられないこと
  3. もし7七馬を取られても7八歩で取り返せて、玉が取られてしまうこと

考えてみると、上の1・2は1手指した局面を想像できればいいのだが、3だけは3手先まで読まないと理解できない。7七馬を取られる可能性があることに気がついているということは2手先は読めたわけだ。

これって水平線効果だよね!

ほとんどの入門者はこのレベルはさっさと通過するので、ここで悩む事例に当たるのはレアケースかもしれない。いい体験をさせてもらったと思う。

紐の効用

ところで、仮に3手先が読めないプレイヤーでも、紐という概念がわかっていれば1手先だけ読めれば詰みが判断できる。たぶん上級者は無駄な先読みをせずに紐を使って探索局面数を枝刈りしているのだと思う。

紐の概念は対局を繰り返して先読みができるようになると、自然に芽生えて来るように思う。人間は自分が無意識に習得したスキルを他人に説明しにくい生き物なので、どうやって紐を教えるかは難問だ。対局数を増やして3手読めるようになるのを待つべきか、さっさと紐を教えるべきか。なかなか悩ましい。

将棋入門

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