本当に棒銀は初心者向けの戦法なのか?

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将棋でよく分からん所: だから棒銀って何よ – Guinea Pig」を読みました。

総合的に見るとこっちのが歩兵1枚分だけ得してますが、こっからどうすれば良いのか分からない。そもそも、どのように打てば相手を崩していけるのか分かってるんだったら苦労してないわけです。

これはまったく正しい疑問だと思います。私も棒銀戦法を学んだ最初は同じ感想を持ちました。大抵のサイトや入門書には「攻めの銀と守りの銀の交換になったので、攻め方が得」って書かれていていて、そのあとは書いてないんだよね。銀と歩が手に入ったけど、どうしたらいいの? って私も思った。

棒銀でハム将棋に勝つ例

今の私ならこう指すという例 (vsハム(ハム先手) | Shogi.io(将棋アイオー))。

まず歩と銀をそれぞれ手持ちにする。ほとんどの初心者がここで途方に暮れる。ここからどう指したらいいのだろうか?


3四歩から角交換。その後端歩を突き捨ててから9七歩と垂らす。同桂なら9六香と走って充分。ハムは同香と取ってくることが多い。


9八銀と打ち込む。8九銀成と8七銀成同金同飛成の両方を狙っている。


9七香車が浮駒なのでハムは角を打って守るが、これはたぶん敗着。以下、7八成銀同玉に……


8七角と打って即詰み。


ちなみに端を絡める手順は中原誠十六世名人の勝つ将棋 攻め方入門に書いてあったものです。

棒銀で勝つことは実は難しい

棒銀は簡単だと思われていますが、棒銀で勝つことは初心者に取ってはハードルが高いと思います。棒銀も交換した銀や歩をうまく使って相手の守備を乱し、乱れた守備の隙を攻める必要があります。

先の対局では9六歩同歩9七歩のような端攻めの知識が必要でした。端歩を突き合っていれば 9五歩同歩9六歩同香で香車を釣り上げてから、8六歩同歩同飛での十字飛車を狙う筋も必要になります。ハム将棋なら受け方も固定されていますが、人間相手の場合はそれぞれの受け方に対応した手筋が必要となります。大変です。

結局のところ初級者に棒銀戦法が奨励されるのは、棒銀戦法を介してさまざまな手筋を学ぶことができて、上達に適していると考えられているのでしょう。棒銀の考え方自体は居飛車・振り飛車の多くの戦法に共通して現れてきますので効率的でもあります。適切な入門書や指導者がいれば棒銀を覚えながら手筋も学べて一石二鳥です。

しかしながら、適切なアドバイス・文章が得られない場合は「将棋界の不親切問題と企業のOJT」のように、初心者を途中で放り出す結果になっているのかもしれません。

棒銀は本当に初心者向きなのか?

ヒロすけさんがブログで序盤の難しさについて書かれています。少し長くなりますが以下に引用します。

平手で将棋を指そうと思ったら次の4点に留意して作戦をたてる必要がある。

  (1)自分が居飛車か振飛車か
  (2)相手が居飛車か振飛車か
  (3)自分の手番が先手か後手か
  (4)角交換をするかしないか(許すか許さないか)

これらに対応できないと、まず勝負にならない。隙をつかれて飛車角を取られて短手数で投了、なんてこともありうる。このうち自分で選択できるのは(1)、ある程度選択権があるのは(4)。(3)は対局直前にならないとわからないし、(2)に至っては指し始めないとわからない。よって事前準備が必要。こう書くと至極当たり前のようだけと、実はこれらのいわゆる「序盤の対応の仕方」を体系的に書いてくれている本はとても少ない。

こちらも、私が初級者のころは大いに悩みました。特に(4)ですね。相手に角を持たれて隙を突かれて打ち込まれてアタフタしているうちに負ける。これが嫌で角道を止めるようになり、四間飛車党になりました。

四間飛車(角道を止める振り飛車)を選択すると(1),(3),(4)はクリアできます。(1)は振り飛車固定、(3)は1手差が他の戦法ほど響かないし、そもそも初級者同士の対局では先手後手はあまり気にならない。(4)は角道を止めてしまうので問題ないし、自分から交換時期を選べる。
(2)だけが問題ですね。相手も振り飛車だと相振り飛車になってしまう。まあ、初級者同士なら慣れないのはお互い様なのでこれも1局かもしれない。

これが棒銀の場合になると、クリアできるのは(1)だけで、(2),(3),(4)については事前に作戦を立てる必要がある。初級者同士だと相手が原始棒銀で攻めてくることも多く、先手後手は大いに問題になる。相手が居飛車か振り飛車かで攻め筋は違うし、角交換したら違う戦型になってしまう。棒銀戦法の序盤選択は実は難しいんじゃなかろうか?

もしかすると、大人は角道を止める四間飛車から入門した方がいいのでは? と最近思っています。囲いの重要さもわかるし、瞬殺されることが少ないので将棋指した気分になりますし。

コメント

  1. あべ より:

    矢倉棒銀でいけるのではないですかね。
    (1)はOK。
    (2)は、四間飛車での相振りが「これも1局」なのであれば、棒銀での対抗形も「1局」でしょう。囲いは舟囲いですか。
    (3)は、まず角道を止めて、飛先は角で受けてから△2二銀~△4二角△~3三銀で矢倉に組めばOK。
    (4)は、角換わり棒銀のような形でOK。

    駒組みの分かりやすさでは四間+美濃、自分から攻めたければ棒銀+矢倉とかですかね。
    あと原始中飛車は駒組みも分かりやすく自分から攻められるので、初心者向けにはいいかも。

  2. しきな より:

    少し省いてしまいましたが
    四間飛車を始めたきっかけは友人と色々な戦法をざっくり指しながらレクチャーしてもらい
    「お前の性格を考えると中飛車が良いよ」とアドバイスを受け、中飛車は左の金が一人ぼっちで寂しそうで嫌だと言ったら天然か!突っ込まれ四間飛車を始めました。

    ※棒銀、右四間飛車、雀刺し、中飛車、四間飛車から勧められました。

  3. 蓬莱 より:

    初めまして。
    自分と同じような観点を持っている方に出会えて嬉しくなり、コメントさせていただきました。

    私も「ヒロすけの将棋忘備録」様からの引用文が非常に重要だと考えております。四間飛車を志向するなら、先手番を取ればとりあえず四間飛車の基本形にはなりますし、後手番でも3手目角交換さえなければ、四間飛車の基本形に組むことができます。

    初心者に対して、「いろいろな戦法を学ぶよりも、1つの戦法をマスターするのがいいよ」と言うのならば、まずは何が何でも基本形にできるような環境が必要だと考えました。

    自信のブログで恐縮ですが、上記の内容を記事にした経験がありますので、お時間があればご覧ください。

  4. しきな より:

    四間飛車から始めた私ですが、個人的には棒銀の方を先に始めれば良かったと思ってます。
    戦い方を全く知らなかったので、初心者の壁を突破するのに苦労しました。
    突破のきっかけは高橋九段の「棒銀と中飛車で駒落ちを勝て!」でした。
    居飛車振り飛車を問わない。駒が少ない分、明確な方針を立てられる。駒落ちのハンデによる数の攻めではなく、持ち駒や成り駒の使い方や手筋を通して平手でも応用が利く戦い方を説いていく初心者向けの解説書はあまり見たことが無く、ためになりました。