将棋研究創刊号(1969年)

2017/04/23書籍, 沖縄の将棋の歴史

「将棋研究」は琉球大学将棋研究クラブの会誌である。1969年の創刊号が沖縄県立図書館に保存されていて、誰でも閲覧することができる。これが中々面白い本なので内容をかいつまんで紹介する。

ガリ版印刷+ホチキス止めだが、ちゃんと印刷所のマークも入っている。なにせ50年近く前の話、コピーだとか簡易製本などがない時代。2号以降が発行されたかどうかは私にはわからない。内容は会の案内、将棋の研究、詰将棋、部員による雑感、寄稿文からなる。雑感を書いている部員9名のうち3名は女性と思われる。たいへん羨ましい華やかだ。

会則によると「琉球大学将棋同好会」が1968(昭和43)年4月10日に「琉球大学将棋研究クラブ」になったようだ。創刊号は奥付によると1969年12月13日であり、発足から2年未満で会誌の発行にこぎつけている。若い力を感じる。



将棋雑感

部員による記事。1人2ページで、将棋を始めたきっかけや現在の状況を書いている。

面白いのはP.37の記事で「最近、内地では、将棋が教育ママの間で子供の頭の体操として、見直されつつあるという」。なんと! 50年近くも前から「将棋は子供の教育に良い」と関係者は言い続けていたわけだ。

沖縄における将棋の展望と課題

さて、興味深いのは「沖縄における将棋の展望と課題」と題した記事だ。この当時の部長さんが書かれている。この記事では「沖縄の近代将棋の夜明けは、一九六六年に始まると言っても過言ではなかろう」と述べている。その理由として、1966年夏に「㐧二回全国高等学校将棋選手权大会沖縄地区予選大会」が興南高校で行われおよそ50名の参加があったこと(しかも審判長が大山康晴名人)、その後少しずつ将棋人口が増えたことを挙げている。

また、1966年以前については「組織はあったが、活発な活動はしなかった」・「主要な原因は、統一的な組織に欠けていたのではなかろうか。従って全琉的な将棋大会も開けなかったのかもしれない」・「現在でも全琉的な統一組織が存在しない」と書かれている。以前書いたように、1959年には琉球新報主催のアマチュア将棋大会が行われ、沖縄将棋連盟も設立されている※1。連盟副会長の真栄田世勲氏は本号にも寄稿していて当時の事情は把握できているはずなので、なんらかの断絶があるようにも伺える。

さて本記事では「一九六七年、琉大将棋研究クラブが結成される」※2・「一九六九年に沖大に将棋研究クラブが生れた」・「沖縄における将棋の普及のために全琉的な機関を設置し、その下に全琉定例将棋大会を実現すべきであろう」と書かれている。その後、1975年には日本将棋連盟那覇支部ができるのだが、琉大・沖大将棋研究クラブとの関係は不明である。

※1 沖縄最初の将棋大会(1959年) | ず’s 将棋
※2 会則(1968年設立)と齟齬がある?

第十八回琉大祭 第二回将棋大会雑感

琉大祭で行われた将棋大会の記事もある。1968年の第18回琉大祭のときに行われ、小中学生と一般(40名)で行われた。小中学生は人数が少なく総当たりリーグとなっているので、多くても10名程度か。合計50名程度の参加者だと思われる。

大会参観者は700人と書かれていて、これは主催者発表なのだろうか。1日の延べ人数なら有り得るかもしれない。

象棋(チュンジー)と将棋の話

沖縄将棋連盟副会長真栄田世勲氏による寄稿文。主に象棋と将棋の歴史について述べている。沖縄将棋連盟や将棋大会については特に触れていない。謎である。

他にも会誌はあるのだろうか?

50年ほど前の会誌であり、本書が県立図書館に収蔵されているのも奇跡のように思える。裏表紙に1000という鉛筆書きがあることからすると、一度古本屋に出回ったのちに平成元年(1989年)に県立図書館に行き着いたようだ。当時に比べると古書店は激減しており、2号以降については入手は困難かもしれない。

もしかしたら、琉大の棋道部に残っていたりするのだろうか? 沖大や沖国大はどうだろうか? いずれにせよ、当時の沖縄将棋界を知るための貴重な手がかりだと思う。

書籍, 沖縄の将棋の歴史

Posted by