強くなるためには“serious study alone”がもっとも重要

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チェスのトレーニングに関する興味深い論文があったので紹介します。論文のタイトルは “The Role of Deliberate Practice in Chess Expertise” で、2005年に発表されています※1。この論文では4カ国のチェスプレイヤーに対してアンケート調査を行い、どのような要因がもっとも棋力(レーティング)と相関があるのかを推論しています。将棋の勉強の上でも参考になる論文だと思います。

※1 The Role of Deliberate Practice in Chess Expertise

棋力に関係する要素

この論文では現在の棋力ともっとも相関の高い要素は “Total log hours serious study”(真剣な自己学習の累積時間)だとしています。それから、個人レッスン、大会の出場頻度、現在の自己学習時間と続きます。



トッププレイヤーになるためには5000時間の“serious study alone”が必要です。1日1〜2時間の自己学習を10年続ける必要があります。これはスポーツや音楽の世界でも言われていることで、トップレベルになるには10年(1万時間程度)の練習が必要になります。

“serious study” って何?

これは“deliberate practice”(限界的練習)のことです。単なる自己学習ではありません。Anders Ericssonによると下記のような練習を指します。

鉄則1:自分の能力を少しだけ超える負荷をかけつづける
鉄則2:「これで十分」の範囲にとどまっていると、一度身につけたスキルは落ちていく
鉄則3:グループではなく、一人で没頭する時間を確保する
鉄則4:自分の弱点を特定し、それを克服するための課題を徹底的に繰り返す
鉄則5:練習を「楽しい」と感じていては、トッププレーヤーにはなれない
鉄則6:これ以上集中できないと思った時点で練習や勉強はうちきる
鉄則7:上達が頭打ちになったときは、取り組むメニューを少しだけ変えてみる
鉄則8:即座にフィードバックを得ることで、学習の速度は劇的に上がる
鉄則9:オンの時間とオフの時間をはっきり分け、一日のスケジュールを組む
鉄則10:どんな能力も生まれつきの才能ではなく、学習の質と量で決まる

超一流になるのは才能か努力か?(Anders Ericsson, Robert Pool)



問題は将棋界での“deliberate practice”が確立されていないことでしょうか。チェスの世界ではこのような学習方法に沿ったテキストが存在していて羨ましい限りです。

1万時間もかけられないよ……

トップレベルではなく中堅プレイヤーであれば1000時間あれば良く、これなら1日30分でも6年間で達成可能な時間です。これなら私でもなんとかなるかな?

ちなみに達成時間は対数で効くので、最初の10時間、100時間、1000時間で得られる棋力差は一定です。伸び悩んでいると思ったら、過去に勉強した時間のさらに10倍の努力が必要なのでしょう。


Amazon:超一流になるのは才能か努力か?