目隠し将棋は棋力の向上に役立つのか

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強くなるためには、真剣な自己学習(serious study)が必要です※1。そのためには「自分の能力を少しだけ超える負荷をかけつづける」必要があります。負荷をかけるための一手段として目隠し将棋を採用している人もいます。目隠し将棋は棋力向上の役に立つのでしょうか。

※1 強くなるためには“serious study alone”がもっとも重要

目隠し詰将棋をやってみよう

目隠し将棋は2名いないとできませんし、最初のうちは中盤まで進まないうちに記憶が怪しげになると思います。そこで「目隠し詰将棋」。通常は出題図や盤面を見ながら解く詰将棋を、脳内盤だけで解くという訓練です。

例えば下図の問題を盤面(駒の配置)だけ覚えたあとで、脳内で解いてみてください。ある程度強い方はこのような問題はひとめで解けてしまうでしょうから、その場合は手元の適当な問題で試してみてください。目の前の問題図を見ながら解くのと、脳内盤だけで解くのとでは難易度に大幅に差があると実感できると思います。


手伝ってくれる人がいる場合は、読み上げてもらう方法もあります。上図の問題なら「玉方、1一香、2一玉、攻め方、3三と、持ち駒は銀です」と読んでもらって、それを脳内で解きます。

これら方法はかなり頭を使いますので疲れます。休み休み試してみてください。

目隠し将棋で棋力は向上するの?

目隠し将棋が良い訓練になるという話はありますが、個人の体験談の域を出ていないように思われます。チェスに関する文献を探したところ、“Chess as a Behavioral Model for Cognitive Skill Research: Review of Blindfold Chess by Eliot Hearst and John Knott”という論文が見つかりました。そこには下記のように書かれています。

Notable Findings

In their review of the literature, Hearst and Knott document a number of notable conclusions that may surprise chess players and non-chess players alike:
(中略)

  • Some of the strongest masters find the actual sight of a chess position to be more distracting than helpful when thinking ahead during a game.
  • Practicing blindfold chess improves sighted chess skill.


先々の局面を考えるときに実際の盤面を見ていると気が散る(邪魔される)という話と、目隠しチェスの練習はそうでない普通のチェスの棋力を向上させる、という話です。プロ棋士も考えているときに虚空を見ているときがありますよね。あれも「実際の盤面が邪魔」なのが理由でした。

棋力の向上については、この論文から参照されている他の論文に書かれているはずですが、それは探せませんでした。有料データベースを探せばあるのかなあ?

結論

目隠し将棋は棋力向上の役にたちそうなのですが、確固たる証拠は探せませんでした。それでも訓練として良いという話は見聞きします。実際、囲碁の世界では、目隠し詰碁のための本も出ていますし※2、将棋にも個人出版の本があります※3。効果あるんじゃないかなあ……私も目隠し詰将棋をすると勉強になったような気がしますし。

将棋でも棋力向上の役に立った、という話があればコメント欄などで教えていただけると幸いです。

※2 眠る前の小さな詰碁〈1〉
※3 目隠し詰将棋

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