弱いソフトを作るのはやはり難しい
ところが、初級者向けの弱い将棋ソフトの進歩は、強い将棋ソフトの進歩に比べると微々たるもののように思う。それでも素晴らしい初心者向けコンピュータ将棋ソフト「こまお」で紹介したように、ぽつぽつ初心者向けのソフトも出てきている。でも、まだまだ「弱ければ初心者向け」と誤解したような作りのソフトも多い。
左図はそのようなソフトと対局した一局面。論点をはっきりさせるため、先手の私はワザと駒を捨てるように指している。初手から▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲2六飛△6二玉▲7六飛△5一金右▲7四飛。飛車がタダである。しかし、コンピュータはこの飛車を取ってくれない!
以下、 △1二香▲8四飛△9二香▲8三飛成△5二玉▲7二龍△6二金▲6一龍△4二玉▲5二龍と、龍を取らないと詰んでしまうところまで追いかけて、ようやく△5二玉と駒を取ってもらえた。 この局面だけ見たら、なぜこんなところに龍があるのか理解不可能だろう。
△5二玉に対して▲7六歩と突いたところ、後手の指し手はなんと△5八飛打!。 この後も、駒交換や駒捨てすると直に只捨て王手を行って駒をお返ししてくる。律儀というか何と言うか。 そのまま延々と駒の譲り合いをし続けていると、201手目にCPU投了。有利不利に関係なく、ある程度手数がかかると勝手に投了する仕様のようだ。
こまお作者のtiharaさんが書いているように「将棋というのは勝てないと面白くないのです」が、初心者はこのCPUに勝って面白いと思ってくれるかは(私には)疑問。勝ったというか、相手が自爆しているわけだし。
ただ、どうしてこのような動作をするのかは想像がつかないわけでもない。強いコンピュータソフトを元に「CPUの評価値があがらないように」修正すれば、こうなってしまうだろう。駒を取ると評価値があがるので取らないし、あがった評価値を手っ取り早く下げるには、駒をタダで取らざるを得ないところに打つしかない(要するに王手)。さように弱くするのは難しい。 取る一手は取る、とかも意外に難しいんだろうなあ。下手に先読みをしているとなおさら。
こまおは取れる駒は取ってきますし駒がとられないように先受けもします。ただ、数手先を受けることをしないので簡単に飛車先を突破されて負けてくれます。そのせいか、こまおにはなんとなく勝ったという気になるんですよね (猫をいじめて申し訳ないという気にもなったり)。やっぱり、良くできてるよね、こまお。
コンピュータ同士のネット対戦場である floodgate にも 程よく弱いソフトである pishogiが常駐していました。pishgi の作者の方は謙遜して「ほどよく弱いのは、考えられて作られているのではなく、全て偶然」と おっしゃってます。しかし、ほどよく乱数を利かせるのは結構大変だと思う。どこに乱数を利かせるか、も難しそう。
いろいろ探していると、 JAIST Repository: 人間らしい振る舞いをするコンピュータプレイヤーの設計という論文を見つけたけど、本文がネットでは読めないっぽい…
リンク:
- ず’s 将棋 » 素晴らしい初心者向けコンピュータ将棋ソフト「こまお」
- ず’s 将棋 » 初心者の気持ちになることは 斯くも難しい / 補助輪付きのソフトが欲しい
- ず’s 将棋 » こんな将棋ソフトが欲しい
- ず’s 将棋 » こんな将棋ソフトが欲しい(補足)
- ず’s 将棋 » 現在のコンピュータ将棋には自然な弱さが必要
- CiNii 論文 – 視覚思考支援による将棋問題解決過程への影響
- 「アマチュアは勝てないので,ソフトが売れなくなっている」(しましま/人工知能学会全国大会2006 – 機械学習の「朱鷺の杜Wiki」)
- HITプロジェクト
- KIDSプロジェクト
- 学生部会(ANGLE) – 参考資料: 対戦型アクションゲームを対象にした プレイスキル向上と継承法確立に向けて | 日本知能情報ファジィ学会
- CiNii 論文 – 対戦型アクションゲームにおけるプレイヤの模倣行動の生成
ディスカッション
コメント一覧
ホント弱い人でも勝てるソフトは難しいですよね。激指や銀星将棋なんて級位レベルでも弱くないし、初心者レベルは考えられない手の連続でかえって面白くないんです。級位者の生の将棋をもっと研究する必要ありますね。
こんにちは!
将皇に追加された”覚えたて”というレベルが意外と楽しめますよ♪
将皇( http://www14.big.or.jp/~ken1/application/shogi.html )ですね。やってみました。
こまおよりは大分強くてハム将棋と同じぐらいでしょうか。手抜きはするんだけど、こちらがミスをするとちゃんと付け込んできますので、本当の初心者にはややきついかな。もうちょっと対局してからレビューしたいと思います。