こんな将棋ソフトが欲しい(補足)

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前回のエントリ「こんな将棋ソフトが欲しい」の内容は「そう感じていた」方が多かったのか、多くの反応をいただいた。山崎バニラさんにまで読んでいただけたのはびっくり。
追記:棋士の遠山雄亮五段のブログからもリンクを貼っていただきました→「ニコニコ生放送ボンクラーズ特集出演後記【追記あり】: 遠山雄亮のファニースペース」。ありがとうございます。
追記:棋士の片上大輔六段にも賛同tweetいただきました。

さて、上記記事に対してmerom686さんが「強さ以外の価値」という良記事を書いておられる。この記事では上記merom686さんの記事を読んで思ったことや、補足を書くことにします。

(「こんな将棋ソフトが欲しい」をお読みでない方は、そちらを先に読むことをオススメします)


コンピュータの歴史に学ぶ

私のコンピュータ将棋に対する考え方は「そろそろ能力の向上を直接の強さ以外のところに割り振ってもいいんじゃない?」というところだ。

大昔、コンピュータがまだ一部のマニアのものであった時代は、コンピュータはその全能力を計算に割り振っていた。利用者の使い勝手は二の次で、コマンドラインから呪文を打ち込むことで指示を与えていた。現在のようなマウスを使ったウィンドウシステムがパソコンでも使われるようになって20年以上経つが、「計算が遅い」「メモリが足りない」「グラフィックスが遅い」と陰口を叩かれなくなったのは21世紀に入ってからだと思う。

今では持て余した演算能力は「使いやすさ」や「円滑なコミュニケーション」に使われている。携帯電話ですら、昔のケータイと今のiPhoneを比べると「使いやすさ」に資源が割かれていることは ひと目でわかるだろう。
(そして、パソコンに詳しい人ほど使いやすさよりも性能を求めていた。今の将棋ソフトの評価に似ているような気がする)。

そしてコンピュータ将棋は

昔のコンピュータ将棋は、何分も考えて考えて変な手を指してたのだが、Bonanzaが登場したころから、あまり時間をかけなくても良い手が指せるようになってきた。思考時間を1秒に制限したBonanzaですら、初級者では勝てないレベルだ。

そこで、先のコンピュータそのものの進化との比較で言えば、そろそろ「使いやすさ」に投資する余力が できてきたんじゃないかな、と思う。対人間の思考だけで何十秒も考えるようでは、使いやすさに回す余力はない。0.1秒で指せるからこそ、残りの時間を使いやすくするために使えるんじゃないかな。


以下、私の想定する利用者は将棋倶楽部24の低級タブかせいぜい中級の下位ぐらいまで。それより強い人は今の将棋ソフトでもまあまあ使えるだろうと思ってる。
(そもそも「商売モノ」の将棋ソフトを開発するときに、初心者の意見は聞いているのだろうか? 将棋世界とか週刊将棋を読んでいるような層の意見しか聞いてないんじゃないかと思ってるのだが….amazonのレビュー欄を見ても将棋の強い人の意見ばかりが目立ってるし)

初心者・初級者でも楽しめる棋力が選べること

レベルを細かく分けること自体は比較的簡単だと思う。問題は「どう分けるか」。例えば、ドラクエに敵が100種類出てくるとして、ヒットポイントが違うだけのスライムが100種類なら、遊ぶ人は怒り出すだろう。まして今の将棋ソフトはスライムが10種類出てくるだけのものが多い。だから「棋風を分けて欲しい」のだ。

金沢将棋レベル100はレベルと棋風の合わせ技で100種類を達成していて成功しているように思う。基本的にはこの考え方でいいのではないか。棋風はもっと多い方が望ましいが (滅多にでてこないメタルスライムみたいな棋風もあると面白いんだろうか?)

本質的に難しいことは、正攻法じゃない方法で対処できないか?

対象者が初心者・初級者であれば「その人たちが満足できる程度」にまともであればいいと思ってます。有段者や上級者の目から見れば変でも、初級者に ばれなければいい。
今の将棋ソフトの初級者モードは、初級者や初心者から見てもあきらかに変だから困るんです。

merom686さんも指摘されているけど「難しい要素は、正攻法で解こうとすると非常に難しい」。でも、例えば『変な戦法は、棋譜が少ないので定跡が機械的には作れない』というのは、「変な戦法を序盤だけそれっぽく指す」のはできるんじゃないだろうか。例えば、筋違い角なら、とにかく角交換して4五角打てばそれっぽくなるように思う。

しかも、最近の将棋ソフトなら最初の数手~10手程度の定跡があれば、途中局面から指し継いでもうまく指せそうです。下図は floodgateというコンピュータ将棋対戦場のpishogi対hiyokoshogiの対局(棋譜)。後手側のhiyokoshogiは「定跡がまったく入ってない」にも関わらず、居飛車急戦をそれっぽく指しています。先手のpishogiの中盤以降の弱さも素晴らしいと思う。

将棋ソフトの定跡作成が簡単であれば、私がいくつか作ってもいいんですけどねえ。以前作ったときは([特定戦法対策・激指/東大将棋/銀星将棋]自分で定跡を作ってみたら?)、とにかく面倒臭かった。ソフト間の互換もないので、潰しが利かないし。


(kifファイル)


『角交換のときに、瞬間的に「角得」と表示されていいなら、駒割は簡単に示せる。これを、「これは角交換だから駒の損得なし」と表示させるのは難しい』 という指摘も、瞬間的な評価でいいんじゃないかと思います。グラフ化して見せるようにすれば、瞬間的な駒損なのか交換なのかも一目瞭然でわかりますし。それだけでも初級者は助かるのに、それすら今のソフトはやってないわけですから。

玉の堅さも「穴熊は美濃より堅い」程度でも助かると思うんですよねえ。5段階ぐらいでいいんじゃないかと。(Bonanzaの2駒関係・3駒関係の評価値のうち、玉の堅さに関係しそうな部分だけ抜き出せば…なんて思ってます)。

他の項目も「ちゃんと解決する」のは死ぬほど面倒でも、ちょっと頑張るだけで助かる初級者が山ほどいるんじゃないかと思ってます萌えストーリーモードを追加するぐらいなら、そっちでがんばって欲しい。

強いソフト作りたいよね

ただ、簡単というのは時間がかからないという意味では全くない。
力のある開発者が、より強いソフトを作りたいのは当然だと思うので、
色々な機能を付けている暇なんてないのだと思う。

まったくその通りで。だからこれは「売る側」が考えればいいと思ってる。天下一将棋会も思考ルーチンはBonanzaだけど、PC用のBonanzaとは全然違うソフトになってるし、そういう味付けをする人は別にいたほうがいいのだろう。

そして、利用者に使いやすくするためには「余力」が必要で、それを生み出すためにもソフト自体の強さを高めることが必要だと思う。人に優しくするには、コンピュータ将棋はまだ弱すぎるのかもしれない。



コメント

  1. より:

    @merom686

    以前、LS3600さんが http://d.hatena.ne.jp/LS3600/20111014 にて、「fv.binのパラメーターを隈無く観察すれば、3駒関係で(大きな)評価点がつくポイントというのは、実はいくつかの法則があることに気づきます。その法則を分類するとだいたい10個ぐらいの評価因子から成ることがわかります」 ということを書かれていました。

    逞しく妄想すると、その10個は人間の感覚する「玉の堅さ」とか「駒得」とかに近いものが含まれているんじゃないかなあと思っています。LS3600 さんの研究はどこまで進んでいるのでしょうか…

  2. merom686 より:

    定跡の標準ファイルフォーマットはすぐに作るべきですね。
    あと、Bonanzaの評価値から抜き出すとか本当に面白そうだと思います。
    私の第一感は、「こんな面白そうなことがうまくいくわけない」(笑)なんですが、
    やってみないとわかりません。