将棋倶楽部24:レーティングデフレの原因について考える

2016/05/27レーティング, 将棋倶楽部24

久しぶりに将棋倶楽部24にて対局して気がついたのですが、持ち時間15分と早指し対局では、15分で待っている人の方が強いように思います。

もちろん、同一人物でも時間が多い方がミスが少ないはずだし、深く読めるから強いはずなのですが、その差を考えても15分で指している人は強すぎるように思う。

このような現象が発生する理由と、レーティングデフレ・インフレが関係しているのではないかという仮説を立ててみました。


レーティングデフレとは何か

仮説について語る前に、レーティングデフレ(インフレ)とはどのような現象であるかを説明します。

将棋倶楽部24に限らず、大抵のレーティングシステムは対局後にやりとりされる点数はゼロサム(合計0)になっています。例えば、500点の棋力の方が100名居れば、レートは合計で50000点。いくら対局が行われても合計は50000点のままです。

このR500の集団のなかで誰かが棋力R1000まで研鑽を積んだとします。本人のレートは500点増えますが、集団全体でのレートは50000点のままなので、(結果的に)他の人のレートが約5点ずつ下がることになります。他の人は棋力が下がったわけではないのにレートが下がってしまいます。

新規入会者がいる場合、この人が入会後にレーティングを向上させれば、他の対局者のレーティングが下がることになります。棋力向上が著しい若い方、入会時にレーティングを低めにつける人が多ければ、この現象が顕著に現れます。

ソフト指しなどでレーティングを急上昇させた挙句にアカウント剥奪されるような場合は、この方の持っていたレーティングは完全に失われてしまいます。最悪です。
(「趣味で24のR急上昇者をチェックするスレ」に事例が掲載されています)。

このように、棋力一定の対局者のレーティングが減ってしまう現象を、(経済用語を流用して)レーティングデフレと呼んでいます。増える場合がインフレです。

棋力が変わらないのにレーティングが減ってしまうデフレの方が、増えるインフレよりも苦しく感じます。これも経済的なインフレ・デフレに似ています。

将棋倶楽部24はデフレを放置したために、棋力表示が町道場や大会の段級位から乖離してしまいました。今では道場初段クラスが初級者タブにいる※1,※2ほど悪化しています。
(24には強い人が集まるからそうなったのではありません)

※1 将棋低級からの成長記 将棋倶楽部24は現在R397(新宿道場二段、
千駄ヶ谷3級なのに24では12級・R397という例)
※2 トピック: ただの独り言です | 将棋倶楽部24掲示板(道場初段〜二段の方が24では10級〜12級)

15分の国と早指しの国

将棋倶楽部24は待ち時間と相手を選択して対局ができます。

推測ですが、どんな対局時間でも指す人は少なくて、多くの利用者は15分か早指しのどちらか一方を主に指していると思います。相互にゆるやかな交流はあるものの、将棋倶楽部24は15分の国と早指しの国に分かれているわけです。

そして、初級タブ(レーティング550点未満)では持ち時間15分を選ぶ人が多く、中級・上級と強くなるに従って早指しが多くなります。有段者はほとんどが早指しで指しています。

さて、ある対局者が棋力向上し、0点から550点に到達したとします。この方が初級タブにいたころはもっぱら15分で対局していたでしょう。
しかし中級タブに移り、棋力が向上すればするほど早指しで指す機会が増えていきます。
この方が15分の国で稼いだ550点は、早指しの国に移動してしまいました。

逆に、棋力以上のレーティングで登録したなどの理由で中級タブから初級タブに落ちる場合、早指しの国に点数を与えてから15分の国に移動することになります。

「中級タブで早指しして負ける⇄初級タブ15分で勝つ」を繰り返せば繰り返すほど、15分の国はデフレし、早指しの国はインフレになります。

15分の人が強い理由

15分の国がデフレ、早指しの国がインフレであれば、レーティングが等しくても15分をメインとする利用者は早指しで指す利用者よりも強いことになります。
もちろん、どのタブにも両方の持ち時間でも指す人はいますので、この現象はある程度は緩和されているはずですが、それでも私には差があるように思えます。

初級タブを卒業し中級タブに上がるとレーティングが急上昇する人がいますが、これも同じ理由かもしれません。

両方で指す人の比率と、それが各タブごとにどれぐらいなのかの情報があれば、この仮説をコンピュータシミュレーションで検証できるかもしれません。

他の将棋対局サイトは対策を行っている

ちなみに、後発の将棋クエストは持ち時間別のレーティングになっています。さすがです。デフレが発生した場合も適宜加点して調整しているようですし。
81dojoも一般的な段級位に合わせるように定期的な改定を行っています。

当道場で運用している段級位システムは、前回調査時(2013年5月)に町道場との対応を確認しております。前回から15ヶ月経過した現在においても適正な対応関係を保っていることから、当道場レーティング計算式のデフレーション防止設計の有効性が確認できたと考えます。
(中略)
昨年の調査時よりも、当道場と将棋倶楽部24の段級位名称の乖離が進んでいます。この結果に基づき、新規登録時の対応表を更新致しました。

81道場と町道場の段級位対応調査結果 – 「81道場」(将棋連盟後援・オンライン将棋対局場)

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